近年、香りを纏うことがライフスタイルの一部として広く浸透し、フレグランスアイテムへの関心が高まっています。気分のスイッチとして、ボトルごとインテリアとして、自分らしさを表すものとして、楽しみ方もさまざま。そんな中、3月5日から15日までの10日間、ワンビル1階グランドロビーにて体験型イベント「Fragrance Journey 〜香りの自己発見〜」を開催しました。福岡では珍しい“香り”にフォーカスした本イベントの模様をお届けします。

「普段から、お客様に『ワンビルに入るといい香りがする』と好感のお声をいただくことが多いんですよ」と語るのは、今回のフレグランスイベントを立ち上げたワンビル運営室の北川さん。
北川:東京に比べると福岡のフレグランス市場はまだまだ発展途上。けれど、ワンビルのフレグランス関連の5店舗はそれぞれ注目度が高く、お客様からの反応も上々という事実もあって。インテリアやライフスタイルにも香りのアイテムを取り入れる人が増えてきていますし、福岡でのニーズの高まりを感じています。そういった背景もあり、昨年から温めてきたフレグランスに特化したイベントをようやく形にできました。

北川:テナントの皆さんに声をかけると、とても協力的だったのも大きな後押しに。イベント全体のテーマを「香りの自己発見」と掲げ、出品する商品は各店舗にお任せしつつ、香りのAI診断の導入や、好奇心を誘う迷路的なブース設計など、さまざまな仕掛けを用意しました。最初から香りに関心がある方だけでなく、ふらっと通りかかった方にも楽しんでもらえたらうれしいですね。
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会場となったグランドロビーに現れたのは、鉄パイプの骨組みが剥き出しになったインダストリアルな構造物。そこにワンビル内のフレグランス関連の5店舗のブースが集合。香りの華やかなイメージとは対極にある無骨さが、かえって今っぽく、通りすがりの人の視線を引きつけます。

仕切りがあるようでない開放的なつくりに、奥へ奥へと足が進む動線。無機質な鉄骨にアンティーク調の木棚やグリーンが織り交ぜられ、ブースに潜り込むと不思議な没入感に包まれます。随所に設けられた木棚は一つひとつテーマが異なり、古本が並ぶ書斎風の一角、アンティークの香水ボトルが佇むコーナーなど、ストーリー性を感じる演出で彩られました。

ところどころにAI香り診断「KAORIUM」から引用した詩的な言葉が掲げられ、その引力に惹かれて足を止めるお客様も。北川さんの言葉どおり、通りすがりの人が自然と香りの世界へ吸い込まれていくようなシーンはイベントを象徴するハイライトに。
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「よく動き、よく休む」の循環をコンセプトに掲げる〈athletia〉は、ルームフレグランスやハンドクリーム、ピローミストなど暮らしに溶け込むアイテムを出品。“レジリエンス(元に戻る力)”を表現する逆さ立ちボトルのユニークなデザインにも注目が集まり、好みの一本を探す「アロマテック ラボ」を使ってじっくり嗅ぎ比べるお客様の姿も多数見られました。

ミュシャ財団初の公認ブランドとして、作品に着想したフレグランスを展開する〈MUCHA〉では、海外のお客様がSNSの写真を見ながらアイテムを選ぶ場面が定番化。イベント初日に店頭販売された新作の香水「ヤロスラヴァ」の甘酸っぱい香りをはじめ、スカーフなどの小物と香りを収めたギフトボックスも並び、ホワイトデーを目前に控えた会期中、ギフト選びのヒントになっていたようです。

世界各国のニッチフレグランスを集める〈NOSE SHOP〉は、人気の20種類をピックアップ。特に注目を集めていたのが、イタリア発〈THoO〉の新作「ピュア ダイヤモンド」。クリスタルがきらきらと揺れる透明ボトルと、洋梨の瑞々しさからサンダルウッドの温もりへ移ろう香りに立ち止まる人が続出。さらに、噴霧式など新しいタイプの香水にも、多くの人が関心を寄せていました。

東京発のコスメ&フレグランスブランド〈LINC ORIGINAL MAKERS〉。ヘアケアからボディケア、フレグランスまで幅広く展開し、レトロでおしゃれなパッケージと国産へのこだわり、上品かつ洗練されたオリジナルアロマが特長です。ブースでは特に女性からの人気が高く、香りを試してはお連れの方と感想を語り合う光景がそこかしこに広がっていたのが印象的です。

1905年創業の朱肉ブランドから派生した、日本発のフレグランスブランド〈?DIT(h)〉。オリジナル香水をフルラインナップで展示し、レコードやヘッドホンといった音楽カルチャーを感じさせるディスプレイが、店舗の空間をそのまま持ち込んだよう。男性が手に取る場面が多く見られ、ボトルのソリッドな佇まいや、甘すぎない神秘的な香りが響いていたのかもしれません。

さらに、ワンビル19階ONE FUKUOKA HOTEL内のバー『THE ROOF』では、スペシャルコラボレーションが実現。東京・神楽坂の〈?DIT(h)〉旗艦店で提供されている香水に着想を得たオリジナルカクテルを、福岡で味わえるという貴重な機会になりました。博多湾を見渡す絶景空間で香りを"飲む"という新鮮な体験が、フレグランスの解釈をぐっと広げてくれたのではないでしょうか。
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AI香り診断「KAORIUM(カオリウム)」をイベントで展開したのは、福岡初の試み。これはセントマティック社が開発した、香りの印象を言葉で可視化する技術です。
まずは、ブランド名も商品名も伏せた状態でサンプルを嗅ぎ、純粋に感性だけで「好き」と感じる香りを選ぶことからスタート。AIが映し出す「穏やか」「伸びやかな」「新緑の草原」といった言葉を手がかりに一番惹かれる香りを絞り込んでいきます。
実はサンプルに使われていた香りは、すべてイベント出品中の香水。最後に、自分が選んだ香りがどのブランドの何という商品かが明かされ、そのままブースで手に取ったり、ブランドの背景を知ったりするところまでがひと続きの体験。「好きな香りを言語化できて新鮮だった」「先入観のない状態で、潜在的に求めていた香りがわかった!」?? そんな声が多く寄せられました。
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会期前半には丁寧なハンドドリップが魅力の『umi coffee』、後半には6階スカイロビーでもおなじみの『REC COFFEE』が出張スタンドとして登場。嗅覚をフラットに戻してくれるコーヒーのブレイクタイムは、いろいろな香りを探りたい人にとってもありがたい存在ですね。

さらに3階『Angelica Michelle』のハンド&フットスパ無料体験、占い鑑定『Inner Journey』での自分磨きに関する15分間のアドバイスも好評。館内で10,000円以上のお買い上げで挑戦できるカプセルトイには、フレグランスミニボトルやONE FUKUOKA HOTELのお食事券など豪華景品が揃い、こちらも盛り上がっていました!
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改めて振り返ると、今回集まった5店舗が日本発、あるいは日本人の感性から生まれたブランドだったというのも新たな発見に。海外勢が主流のフレグランス市場にあって、「日本のフィルターを介した香り」が一堂に揃う光景はなかなか新鮮です。
会場では性別や年代を問わず幅広い方が足を運び、男性のお客様が想像以上に多かったことも、今回の気づきのひとつ。ユニセックスに楽しめる香りが増え、香りでセンスや気分を表現するという感覚が、天神の街にも浸透しつつあるのかもしれません。
香りを選ぶことで自分の知らなかった一面に気づいたり、思いがけない一本との出会いが日常に高揚を運んでくれたり。目には見えないけれど、確かに心を包み込んでくれるフレグランスの存在感。この「Fragrance Journey」が、たくさんの方にとって自分らしい香りを見つけるきっかけになっていたらうれしく思います。
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Interview & Text & Photo_ Maiko Shimokawa
Edit_ Taku Kobayashi