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2026.01.31 UP

心地よさから始まる、丁寧な暮らし。〈中川政七商店〉に学ぶ日々の暮らしのヒント

「丁寧な暮らし」という言葉に、どこか距離を感じてしまうことはありませんか。時間や心に余白がある人だけに許されたもののように映り、自分の暮らしとは重ならない言葉として受け取ってしまうのかもしれません。では、「丁寧な暮らし」とは、本来どのような暮らしを指すのでしょうか。その答えを探して、創業300年以上の歴史を持つ〈中川政七商店〉を訪ねました。お話を伺ったのは、副店長の米田奈津美さん。日々お客さまと向き合ってきた米田さんだからこそ語れる、暮らしのヒントがありました。新しい年のはじまりに、日本の文化とともにある「心地よい暮らし」に、そっと目を向けてみませんか?

「丁寧さ」よりも、大切なのは「心地よさ」

「実は、私たちは"丁寧な暮らし"という言葉を発信してきたわけではないんです」米田さんはそう話します。

〈中川政七商店〉が大切にしているのは、日々の暮らしを無理なく支える「心地よさ」。手に取ったときに、なんだか気持ちがいい。使い続けるうちに自然と馴染んで、いつの間にか欠かせない存在になっている。そうした心地よさの積み重ねが、結果として「丁寧な暮らし」と受け取られてきたのかもしれません。

同店が掲げるビジョンは、「日本の工芸を元気にする!」という言葉。工芸を未来へつなぎ、暮らしのなかに「多様な選択肢」を増やしていきたいと考えています。

「工芸がある暮らしは、特別なことをするためのものではなくて。毎日を少し気持ちよくするためのものだと思っています。使う人の暮らしにそっと寄り添い、気づけば手放せなくなっている。そんな存在になる商品を大切にしています。」

米田さんがそう話すとき、店内の道具たちが、誰かの日常に寄り添う存在として、出番を待っているかのように見えてきました。

日々の暮らしの、その先にある「工芸」

 
「〈中川政七商店〉の社内にはもともと工芸が好きで集まった人たちが多くて。 ひとり暮らしや、お子さんがいるご家庭などいろいろな暮らし方がありますが、それぞれのライフスタイルに合わせて、うまく工芸を暮らしに取り入れていますね。」と米田さん。

工芸があることで、暮らしが少し豊かになる。その感覚が当たり前のように共有されているからこそ、〈中川政七商店〉の提案は、背伸びをせず、無理のない心地よさへとつながっているのでしょう。

ワンビルに構える、九州最大級の工芸と暮らしの拠点




〈中川政七商店〉では、現在全国で60以上の直営店を運営していますが、その中でもブランドの世界観をより深く体験できる旗艦店が4店舗存在します。

そのなかでワンビル内にある福岡天神店は、2025年春にオープンした新しい旗艦店です。日本の工芸に根差した衣食住にまつわる生活雑貨を約2200点取り揃えています。波佐見焼や八女提灯など九州の工芸を特集した企画展を常設するほか、ワークショップなどの体験を通して、土地の素材や風土、暮らしと結びついて育まれてきた工芸を、この場所だからこそ伝えられる「心地よい暮らし」として提案しています。

ここからは、その「心地よさ」を実際に感じられる道具をいくつかご紹介していきます。

暮らしを整える、名脇役の道具「かや織ふきん」




毎日の暮らしのなかで、手に取る機会の多いもののひとつにふきんがあります。

ふきんは、台所仕事に欠かせない存在でありながら、主役として語られることは多くありません。けれど〈中川政七商店〉では、この何気ない布ものこそ、暮らしの心地よさを支える大切な道具だと考えています。

〈中川政七商店〉が販売している「かや織ふきん 各550円(税込)」は、かつて蚊帳に使われていた、綿100%のかや織の生地を5枚重ね縫い合わせてあり、使うほどにやわらかく手に馴染みます。柄も季節のものからキャラクターまでラインナップも豊富で、どれにしようかと選ぶ時間も楽しみのひとつです。


「ふきんを使って、洗って、干す。その一連の流れが、台所のルーティンとして整っていくんです」と米田さん。なかには、毎日煮沸消毒をして清潔に保つという人もいるそう。そうした手入れの時間そのものが、気持ちを切り替えるきっかけになっているといいます。

使い始めはパリパリとした手触りですが、糊を落とし、少しずつ柔らかく育っていくふきん。丈夫だからこそ、長く使い続けることができ、役目を終えるまで寄り添ってくれる存在です。気づけば「これがないと落ち着かない」と感じるほど、暮らしの相棒になっている人方も多いのだとか。店頭でも、そんな声をよく聞くのだと米田さんは教えてくれました。自分のためにはもちろん、大切な人への贈り物にもおすすめです。

伝統を、いまの暮らしへ。漆椀という選択

「漆の器って、憧れるけど使うのはちょっと...」と漆の器にハードルを感じている方も、きっと多いのではないでしょうか。そこでご紹介するのが、〈中川政七商店〉でも人気の「食洗機で洗える漆椀」シリーズです。写真:「食洗機で使える漆椀 中」5,280円(税込)

「生活に合わなければ、どんなに良いものでも続かないですよね」と米田さん。伝統的な素材や佇まいを大切にしながら、素材や製法を一から見直し、耐久性や使いやすさを追求しました。手間を減らしながらも、漆ならではの軽さや口当たり、あたたかさはしっかりと残されています。

経年による変化も、あらかじめ伝えたうえで提案するのが〈中川政七商店〉らしさ。変わっていくことを受け入れて、使いながら育てていく。その過程ごと楽しめる漆椀は、日々の食卓に静かな豊かさを添えてくれます。

季節を楽しむ、小さな「置き飾り」

「そういえば最近、季節の移り変わりを感じたのはいつだっただろう。」日々に追われていると、ふとそんなことを思うことがあります。気づけば一年があっという間に過ぎていく。そんな感覚を抱いている方も、きっと少なくないはずです。

〈中川政七商店〉が提案する季節の「しつらい」は、季節を大きく演出するためのものではありません。タペストリーや小さな置き飾りをひとつ置く。それだけで、空間にささやかな変化が生まれ、気持ちが自然と切り替わります。

「今の時代、季節は意識して迎えないと感じられないものになりつつありますよね」と米田さん。だからこそ、刺すだけ、掛けるだけの簡単な「しつらい」が、日常にちょうどいいのだと言います。 

初めての方には、小さな置き飾りから始めるのがおすすめだそう。玄関先やリビングの棚に、ちょこんと置いてみる。それだけで、ふと目に入ったときに季節を感じられます。

「置き飾り」を飾るのに、決まりごとは何もありません。飾る時期も、場所も、自分の心地よさに合わせて選んでいい。しつらいは、日本の季節を楽しむための、もっと自由で身近な習慣です。

自分を労わる時間をつくる、ひとり土鍋

最後にご紹介するのは、「野菜がたくさん食べられるひとり鍋 8,800円(税込)」です。このお鍋の魅力はなんといっても、野菜をこんもり盛れる深さ、軽くて扱いやすい形、調理してそのまま器として使える設計にあります。洗い物を増やさず、無理なく「ちゃんと食べる」ことを叶えてくれる優れものです。

 土鍋ならではの蓄熱性で、食事のあたたかさが長く続くのも嬉しいところ。火にかけて、湯気が立ち上るのをじっと眺める。そんな何気ない時間が、自然と気持ちを落ち着かせてくれます。使い込むほどに現れる焼け跡や風合いも、道具と過ごした時間の証として、少しずつ愛着に変わっていきます。

食べることは、生きることに直結しています。食事のためのその時間を丁寧に扱うことは、自分自身を大切にすることとイコールです。ひとり土鍋は、忙しい毎日のなかで、静かに自分を労わるための心強い相棒となってくれます。

丁寧な暮らしは、何かを完璧にこなすことではないのかもしれません。毎日使う道具を大切にすること、季節の気配に目を向けること、そして自分を労わる時間をつくること。そのひとつひとつが、暮らしの心地よさにつながっていきます。

〈中川政七商店〉が教えてくれるのは、無理をせず、自分のペースで続けられる、日本の文化とともにある暮らし方です。新しい年のはじまりに、日本の文化とともにある「心地よさ」を日常のなかに迎えてみてください。

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Interview & Text & Photo_ Yumi hyfielde
Edit_ Taku Kobayashi


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