ONE BUILDING JOURNAL

ブログマガジン

2025.10.28 UP

都市に根づく緑、ONE FUKUOKA BLDG.を包み込む植栽の力

ワンビルを訪れた人の多くが「緑の心地よさ」を口にします。館内の植栽を手がけたのは、植物のレンタル・メンテナンス事業を行う、株式会社グリーンディスプレイが運営するショップ「Viridian(ビリジアン)」。植物を通じて都市に新たな風景をもたらす「Viridian」の役割は、単なる装飾を超えた“創造交差点”そのものです。今回は自ら店舗コンセプトを考え、ビル館内の緑の設計を担当した、内海陽介さんにワンビルの植栽に込めた想いやエピソードを伺いました。

「創造交差点」に寄り添うインドアグリーン

ーーまずは今回ワンビルの植栽に込めた、一番の思いを教えてください。

内海:最初に伺ったコンセプトが「創造交差点」でした。その言葉にとてもわくわくしましたね。人の流れや出会いが生まれる交差点で、植物がその「×」の記号になれればと思いました。植栽は空間全体からすると小さな存在ですが、施設のコンセプトに少しでも寄与できるよう意識しました。「人×空間」「人×時間」「人×都市」、その交差点に植物があること。それを第一に考えました。

ーーワンビルの提案はどのように進められたのでしょうか?

内海:施設全体とフロアに合わせて風景をどう演出するかを検討しました。私たちグリーンディスプレイがご提案したのは、下記のようなコンセプトです。 

🔳地下2階「Flowing Freely」

休憩スペースがある地下では、柔らかい印象の自然樹型を中心にセレクト。地下にいながらも、まるで外にいるような心地よさを感じていただけるよう意識しました。

🔳1階「Harmonize」

福岡の街の包容力をテーマに、さまざまな文化を受け入れるような調和性を表現。比較的大型の植物を配置し、おおらかな印象の空間に仕上げています。

🔳2階「Classy Playground」

アパレルブランドが多いフロアに合わせ、ラグジュアリーな雰囲気を演出できる植物をセレクト。フロアを移動するごとに景色が変わり、新しい発見を楽しんでいただけるように工夫しています。

🔳3階「Be Natural」

自社店舗があるフロアでは、植物とともに自然を感じる暮らし=ライフスタイルをテーマにしました。2階に比べて屋外の空気感を感じさせる植栽を多く取り入れています。

🔳4階「New Discovery」

書店などが入るフロアのため、「新たな発見」をキーワードに、好奇心を刺激するような珍しい樹形の植物を多めに配置しました。

🔳スカイロビー「Creative Interaction」

ワンビルのシンボルとなる空間には、クリエイティビティを誘発する大型の樹木を配置。あえてプランターの根元に砂利を設けることによって、鉢植えでありながら一つの風景として感じられるよう工夫しました。天井高を活かしたダイナミックなスケール感もポイントです。

🔳19階「Luxe Atmosphere」

ホテルフロアは非日常的なラグジュアリーな空間を演出できるようセレクト。スイートルームにも植栽を入れています。

個性ある樹を選び抜き、特別な空間をつくる

ーーフロアごとのテーマに合わせた植物は、具体的にどのようにして選ばれていらっしゃるのでしょうか?

内海:設置場所は内装設計の中でおおよその配置計画が決まっていたので、それに基づいて設置する植物を選びました。心がけていたのは、大量生産された画一的なものではなく、動きを感じさせる樹形を選ぶことです。観葉植物は鹿児島・指宿や沖縄の生産者様から取り寄せることが多いのですが、私や専任のスタッフが現地に足を運び、植物をじっくりと見て「これだ!」と思える、少し“ひねくれた”個性ある樹を厳選しました。

ーー内海さんが特に思い入れのあるフロアはありますか?

内海:1Fグランドロビーと6Fスカイロビーですね。1Fはお客様をお迎えする場のシンボルとして、ふさわしい植物を選んでいます。それがやっぱりこの場の特別感につながるかなと思って、絶対に自分の目で選んで決めたいと思いました。

でも実は一番大変だったのも1Fのグランドロビーでした。オープン前の4月に搬入をしたんですが、開業までフロアが暗い状況が続いたので、少しずつ植物の元気がなくなってしまったんです。開業前にこの状態ではよくないと思い、グランドオープン前夜に一部の植栽を入れ替えました。ギリギリのところで状態のいいものに切り替えられてよかったなと思っています。

ーーどのフロアにも植栽がしっかりと馴染んでいるように感じましたが、初めてスカイロビーに来たときに植栽の大きさに驚いたのを覚えています。

内海:そういったリアクションをいただけることはとても嬉しいですね。スカイロビーは窓側に大きな植物がくるように配置をしています。スカイロビーの植物は特に大きいものをセレクトしたので、搬入も大変でしたね。 大きいものだと200kg?300kgあるので、 男性スタッフ5?6人で抱えながら、ひとつずつ大切に運びました。

搬入する前に何度もシミュレーションをしていましたが、実際にスカイロビーに搬入してみると、高い天井の広々とした空間にとても馴染んでいるように思います。選んでよかったです。開業後は、幅広い世代の方々がスカイラウンジを利用されているのを見てとても嬉しくなりました。気持ちのいい空間なので、みなさん集まっていらっしゃるのかなと思います。

植物は「経年劣化」ではなく、「経年優化」する

ーー外で育つものと中で育つものは環境や相性があるのかなと思うんですが、メンテナンスの大変さもあるのでしょうか?

内海:室内で育てている「インドアグリーン」は主に東南アジアや中南米のジャングルの低層、いわゆる林床で育っているものが多いです。暗いところや木漏れ日などで生きているので、施設内でも順応します。逆にいうと寒さに弱く、木漏れ日より弱い光だと痛んでしまいます。今回ワンビルに置いている植物は、字が読めるくらいの明るさであれば問題ないものを選びました。開業後はグランドロビーにも光が入るようになり、植物たちも環境に少しずつ順応してスクスクと育ってくれています。

ーー館内の植物は5?10年など、一定の時間が経つと入れ替えを行うこともあるのでしょうか?

内海:よほど傷んでしまわない限りは、今の植物を維持管理していきます。実は当初のプレゼン時に弊社CEOの言葉を代弁してお伝えしたのですが、「植物は経年劣化ではなく、経年優化する」という考え方を大切にしています。多くのものは時間の経過とともに劣化してしまいますが、植物は丁寧に維持管理を続けていけば、むしろ風景としてより良くなっていく。そこに一番の価値があると考えています。

ワンビルに設置した植物も、メンテナンスを重ねることで環境に溶け込み、やがて歴史を感じさせるような趣が生まれてきます。実際に、4月に導入した植物がこの数ヶ月で新しい芽を出したり枝を伸ばしたりしていて、とても嬉しく思っています。しっかりと環境に適応してくれている証拠ですね。お客様にもお気に入りの植物を見つけていただき、一緒にその成長を見守っていただきたいと思いながら、私たちは日々のメンテナンスを行っています。

日常を彩る、小さな風景を持ち帰る

ーー開業してから数ヶ月が経ちましたが、お客様からの反響はいかがでしょうか?

内海:嬉しいお声として印象に残っているのは、ホテルにご宿泊されたお客様が客室に置かれていた植物をご覧になって、わざわざ店舗までお越しくださったことです。ご自宅用にお求めいただけて、とても光栄で嬉しかったですね。

ーー実際に館内で見て興味を持ったら、お店に足を運んで購入できるのも魅力ですね。店内にはどのような植物を置いているのでしょうか?

内海:ワンビルという都心の一等地という場所柄、まず重視しているのは“インテリア性”です。プランターと組み合わせたときに美しく見えることを第一に考えつつ、同時に育てやすさにも配慮しています。お客様が店頭で手に取り、ご自宅に持ち帰られたあとの暮らしの中でも楽しんでいただけるよう、できるだけ丈夫で育てやすい品種を選んでいます。

当店のポリシーとしては、プラスチックのプランターのままでは置かず、インテリア性の高いプランターとセットでコーディネートすることを徹底しています。スタッフが一つひとつ美しく見えるように組み合わせているんです。プランターは海外製が多く、例えばベルギーの「DOMANI」というブランドのものを取り入れています。国内製のものでは「MATCHA(抹茶)プランター」という抹茶椀の形をしたものなどをセレクトしています。

MATCHAプランターは、特にインバウンドのお客様からも手に取っていただく機会が多いですね。実際に手に持ったときに「抹茶椀と同じサイズなんだ」と感じてもらえるような遊び心を込めて選んでいます。

お店の主力商品としては、盆栽のような雰囲気を楽しめるアイテムを展開しています。あくまで“本格的な盆栽”というよりは、気軽に手に取っていただき、日常の中で雰囲気を味わっていただける商品です。そのため、お客様からもとても好評をいただいています。

フロアに配置している植栽と同じコンセプトで、一鉢の中にも小さな風景が広がるように意識しているのが特徴です。

ーー最後にいつもワンビルに足を運んでいらっしゃる方はもちろん、初めてワンビルにいらっしゃる方に向けて、ワンビルのグリーンの楽しみ方をご紹介ください。

内海:どのフロアもそれぞれの魅力を持っているので、ぜひ各フロアを巡っていただけると嬉しいです。特にスカイロビーは室内にいながら空中庭園のような解放感を感じられますし、そこにある植物は私たちの自信作です。誰かにとってのそんな“お気に入りの場所”になれると嬉しいですね。ワンビルの中にお気に入りの木を見つけて、その木のそばでゆったり過ごす時間をぜひお楽しみください。

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Interview & Text & Photo_ Yumi hyfielde
Edit_ Taku Kobayashi


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