今年の夏はとてつもなく暑く、本当に長かった…と、気候変動を肌で感じる今日この頃。「未来のために今できることは?」と考える機会も増えたのではないでしょうか。アパレル業界でも、環境への思いやりを上質なモノづくりにつなげる取り組みが行われ、リサイクル素材やアップサイクルの技術開発が進んでいます。そこから生まれたアイテムは地球にやさしく、見た目も機能性もハイクオリティ。そんな選ぶ喜びを得られる、素敵なお買いもの体験を紹介します。
ワンビル3階にある『AIGLE(エーグル)』は、国内最大の広さを誇る直営店。店内中央の円形棚にはブランドを象徴するラバーシューズのコレクションが並び、話を聞くとこれらのアイテムのほとんどがリサイクル素材で作られているのだそう。
1853年、フランス・ロワール地方で生まれたAIGLE。ファーマーや田舎暮らしの人々のために上質な天然ゴムを使ったブーツを作り始めて以来、170年以上が過ぎた今も職人が1点1点手仕事で作り続け、製造過程で余ったゴムの端材も無駄にしないという徹底した生産背景を持つ。
例えば、ブーツ素材のうち、アッパーの約40%と補強材の90%にリサイクルゴムを利用。さらに、ソール素材の50%以上もリサイクル素材。こうして廃物を最小限に抑えながら、天然ゴムノキを原料とするラバーブーツを製造し、環境への配慮に大きく貢献しているのだ。
そしてもう一つ、近年積極的に行われている「AIGLE for tomorrow」の取り組みにも注目したい。これは再生素材や環境に配慮した生産背景を持つ商品を指し、2027年にはアイテムの70%をこの基準に適合させることを目指している。加えて、2030年までに製品1点あたりの温室効果ガス排出量を55%削減することも目標に掲げ、世界的ブランドとしてエシカルなものづくりを牽引している。
※ 防水透湿素材のジャケットも「AIGLE for tomorrow」のアイテム。
店内には秋冬の新作が続々と登場し、機能性とファッション性を両立させたアイテムが勢揃い。今季おすすめの「ゴアテックス ミドルトレンチコート」は、取り外し可能なフードが付いたタイムレスな一着。こちらも「AIGLE for tomorrow」のアイテムで、リサイクル繊維を使用し、防水・防風・調湿機能を持つ。シティユースとしてはもちろん、ハイキングなどちょっとしたアウトドアシーンにも活躍してくれそう。
見た目の良さや機能性を求めて手にしたものが、結果として環境に配慮したアクションにつながって、着心地や佇まいにも満足しながら長く愛用できる、そんな気持ちの良いお買いものをぜひ体感してみて。
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4階エスカレーター横でひときわ目を引く、カラフルなバッグやウエアの数々。眺めるだけでテンションが上がる『Cotopaxi(コトパクシ)』のアイテムも、実はアップサイクルによって生まれたもの。「このシリーズは廃棄される予定だった残布から生まれた一点ものなんですよ」と店長・関さん。その生産背景を詳しく聞いていくと、ブランドへの共感や好感がぐんぐん増してくる。
ブランド名は創業者が幼少期に暮らしていた中南米・エクアドルの活火山に由来。当時、現地の同世代の子どもたちが素足で物乞いをする姿に衝撃を受けた創業者は、「厳しい境遇の人々と手を取り合うものづくり」を目指し、アジアの発展途上国で現地職人を起用する仕組みを構築。年間収益の1%を自社財団に付与し、貧困問題に取り組んでいる。
Cotopaxiのアイコンとなっているのが〈Del Dia(デルディア)〉シリーズ。高品質な余剰生地(残布)をアウトドアブランドから買い取り、表裏の一つひとつの生地に活用。これらの様々な生地、ステッチ、ジッパー、ロープに至るまで、すべてのカラーコーディネートが職人の感性に委ねられ、細かな部分も手作業で縫製されている。だから世界に一つだけのカラーパターンで、まさに“一点もの”なのだ。
店内に展示されたバッグの解体パーツを見ると、一つのバッグに多くの生地や金具、職人の手が加わっていることが伝わってくる。Allpaシリーズのバックパックはなんと300ものパーツが組み合わさって作られているというから、手仕事の細やかさに脱帽!
福岡店では〈Del Dia〉だけで約20のモデルが揃い、中にはキッズラインも。実はキッズ用のリュックが大人に人気で、ショルダーを調整すれば成人男性も背負えるサイズ感。男性スタッフは通勤バッグとして取り入れているそうで、このフィット感がランナーにも好評だとか。
廃棄されるはずだった生地が、職人の手によって世界に一つだけの配色へと生まれ変わり、地球環境への配慮、現地での雇用創出、そして手にする人のワクワク感へ。こうしたハッピーなサイクルで生まれる元気でカラフルなCotopaxiのアイテムが、私たちの日常を彩る相棒になってくれるはず。
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グリッド棚やテーブルに並ぶ、色とりどりのシューズ。フリルやスカラップ、編み模様など、多彩なデザインに心躍りつつ、手に取るとその軽さにびっくり! さらに驚くのは、こんな可愛い靴を自宅で手洗いできることだ。
神戸で約25年靴づくりに携わってきた社長と、アパレル業界で様々な商品を生み出してきたプロデューサー兼デザイナーが手がけるシューズブランド『Öffen(オッフェン)』。「地球の未来のためにも、環境に配慮したモノづくりを」という強い想いが、徹底したゼロ・ウェイストのモノづくりとアップサイクルの仕組みの根幹にあるという。
実際に、Öffenのシューズは一般的な靴の半分ほどのパーツで作られている。あらかじめ靴の形に編み上げた生地を縫い合わせる製法で、裁断による端材がほとんど発生しない。また、アッパー部分は透明なペットボトルを原料とした再生ポリエステル糸、底面のソールは医療現場でも使われる安全なシリコン素材を使用。環境への配慮が素材や製法などすべてに行き渡っている。
パーツが少ないことで靴の軽量化が実現し、裏地をつけないデザインによってニット地の柔らかな肌触りを直に感じられて、夏は涼しく冬は暖か。インソールは取り外せるので、汚れや匂いが気になったらサッと手軽に洗えて、乾きが早いため翌日に快適に履くことができる。こういった履き心地や使い勝手の良さもリピーターの心を虜にするポイントだ。
ちなみに店舗では、靴箱の代わりにオーガニックコットンの泉州タオルに包んでお渡し。すぐ処分しがちな靴箱と違って、タオルなら自宅で様々なシーンで再利用できる。さらにリユースサイト「Pre-Loved Store」では、リユース可能なÖffenのシューズを回収し、洗浄、修繕、点検を行いながら中古品として再販するサステナブルな取り組みを実施中。回収可能なシューズを店舗に持参すると、次回使える2000円分のチケットと交換できるので、エコでハッピーなこの回収プログラムをぜひ活用してみて。
汚れたらさっと洗えるから、明るい色味の靴も積極的に使えて、足元のオシャレが楽しみに。メンテナンスしながら大切に愛用し、新しい靴に買い替えるためなど様々な理由で手放す際は、回収プログラムを利用してお得にお買いものを。製造の始まりから使い終えた時まで、一つひとつの地球にやさしい選択が明るい未来につながって、なんだか自分も良いことができた気分でうれしい。Öffenの靴を履けば履くほどに、こうした心地よい循環を実感できそうだ。
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Interview & Text & Photo_ Maiko Shimokawa
Edit_ Taku Kobayashi
AIGLE(エーグル)
フロア:3F
TEL:092-753-5650
Cotopaxi(コトパクシ)
フロア:4F
TEL:070-3246-5529
Öffen(オッフェン)
フロア:3F
TEL:092-401-5335