ONE BUILDING JOURNAL

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2025.07.15 UP

【ONE FUKUOKA FES 後編レポート】ミュージック、アート、食、学びが魅せた熱狂の”共創空間”

ワンビルで開催された「ONE FUKUOKA FES」は、3日間にわたって開催され、音楽、アート、食、学びといった多様な要素を通じて、世代やバックグラウンドの異なる人々が集う場となった。今回はレポートの後編として、フェス期間中に実施されたさまざまなイベントにフォーカスする。

即興と挑戦が生む、キッズダンスワークショップ




フェスのイベントでも特に人気を集めたのが、ダンサー・BOXER氏と、DJ SYUNSUKE氏によるキッズダンスワークショップだった。6階「ONE FUKUOKA CONFERENCE HALL」には、ワークショップの開始時間が近づくにつれ、子ども連れの家族や好奇心に満ちた来場者が集まりはじめた。

ワークショップが始まりスピーカーから重低音が鳴り響くと、会場の空気は一変。BOXER氏は最初に参加者とゆるやかに挨拶を交わすと、あっという間に子どもたちを音の波に乗せていく。



一瞬一瞬の空気を読みながら、子どもたちの動きを引き出していく様子はまさに“共創のダンス”だ。BOXER氏とSYUNSUKE氏の2人の息の合ったセッションに、フロアの空気はさらに高まり、一つひとつの動きができるようになるたびに、子どもたちの顔はほころんでいく。最初はおそるおそる身体を動かしていた子も、終盤には音楽に身を任せて自由にステップを刻んでいた。まるで、彼ら一人ひとりが即興のダンサーとして目覚めていくかのようだった。

BOXER氏の言葉を聞き逃すまいと集中し、ステップを踏み続けた90分間のワークショップは、参加者にとってあっという間の時間だったに違いない。



「このジャンルのダンスは初めてだったので、難しい部分もありましたが、BOXERさんのレッスンはとてもわかりやすくて、楽しかったです!新しいことにチャレンジできて、いい経験になりました」と語るのは、北九州市から来た13歳の女の子。ダンス経験は小学生の頃からあるが、今回のスタイルは新鮮だったという。その笑顔はキラキラととても眩しい。



ワークショップを終え、BOXER氏はこのワークショップの意義をこう語る。「東京でもあまりない、商業施設でのダンスイベントは非常に新鮮で面白い経験でした。福岡のキッズたちは本当に純粋で、楽しそうに踊っていたのが印象的。福岡でも、世代を問わず参加できるようなイベントが増えて、人と人が自然と交わるような場所になっていったら嬉しいですね」

DJのSYUNSUKEさんも、「ワークショップでDJを担当するのは初めてでしたが、BOXERさんとの連携も自然で、子どもたちの一生懸命な姿にこちらも刺激をもらいました。普段は夜のイベントが多いけど、昼間のこうした空間も素晴らしい。音楽やダンスに初めて触れるきっかけになればうれしいですね」とイベントへの思いを語った。

DJ体験で広がる表現の世界とMPCで遊ぶビートの時間


フェスでは、他にも音楽制作とDJ体験に焦点を当てた2つのワークショップを開催。初心者や子どもでも参加できるよう設計された内容で、音楽を「つくる」「つなぐ」楽しさを実際に体感できる貴重な機会となった。


DJ・プロデューサーとして国際的に活躍するYonYon氏によるワークショップ「Apple Musicを使って、DJをやってみよう!」では、初心者用のDJコントローラーを使って、音楽を操作する面白さを体験。


MPC(Music Production Controller)を使った指ドラム体験ワークショップ「パッドドラムマシーン MPCに触れてみよう!」では、MPCプレイヤーのMPC GIRL USAGI氏による指導のもと、音を鳴らすパッドを叩いて曲を流す遊びから、8ビートを使った指ドラム演奏体験まで、リズム感を育てるプログラムが展開された。

個人出版の熱が街に伝播する「NEWGRAPHY “OFFERS”」



3日間のフェス期間中、館内では「SHOWCASE」と呼ばれる様々なイベントが同時多発的に開催されていた。1Fグランドアベニューで行われていたのは、福岡を拠点とするクリエイターが集結し、ZINEや写真集、アートブックなどを展示・販売した「NEWGRAPHY OFFERS」(福岡発アートブックフェア「NEWGRAPHY Fukuoka Art Book Expo」の特別スピンオフ企画)。舞鶴中学校の体育館で行われた前回の大規模イベントの熱が冷めやらぬ中、福岡・天神のまん真ん中という立地で、より多くの人に個人出版の魅力を届けた。



「NEWGRAPHY OFFERS」を主催する瀬口賢一さんは、「これまでアンダーグラウンド寄りの活動が多かったので、天神という福岡の中心地で開催できることは、より多くの方に個人出版の魅力を届ける意味でも貴重な機会だと感じています。最近は多様性と言われつつも、表現が画一化しやすい風潮があると感じていますが、もっと街に“挑戦”や“遊び心”があっていい。そのために、こうした表現の場がもっと増え、福岡の街がよりクリエイティブに活気づいていくことを願っています!」と語ってくれた。



会場には15組の出展者が集い、充実したブースが並ぶ。印刷工程を体験できるワークショップも実施され、活版、ガリ版、シルクスクリーン、リソグラフの4種を駆使した"ONE POSTER MAKING"では、表現の裏にある労力や工夫を体感することができ、参加者は貴重な機会を楽しんでいた。

日常の風景がアートに変わる「鹿児島睦 × FACT バルーンアート展示」




1Fグランドロビーに突如現れた巨大なバルーンアートは、アーティスト・鹿児島睦による新作「Primavera(さつき・めい)」。やわらかなフォルムと色彩で、通行人の足を止めるインパクトを放つ。FACTとの共催で実現したこの展示は、アートを特別なものではなく「街の日常」にする試み。装飾や立体作品を通じて、視覚的にも空間的にも創造の刺激を届けていた。

感性を共有するポスタープロジェクト「PHOTO POSTER PROJECT」



A2サイズに限定された写真ポスター展「PHOTO POSTER PROJECT(フォトポスタープロジェクト)」は、株式会社cizucuが運営するフォト投稿サービスから生まれた初の福岡開催イベント。テーマは「創造交差点・心のざわつき」。クリエイターが自ら選んだ1枚を大判プリントし、会場内で日替わり展示。写真に込められた感情や視点を、観る人それぞれの解釈で受け取る、静かで力強い表現空間となっていた。

食と音が交差する空間「MIXTURE STAND TENJIN」


6Fスカイロビーにて開催された「MIXTURE STAND TENJIN」は、スタンディング形式のフード&ドリンクと音楽イベントの融合。Yorgo、Filles et Garcons、TACOSCOなど、福岡の人気飲食店が一堂に会した。

各ブースではクラフトビール、日本酒、ワイン、スパイス料理まで幅広く提供され、音楽に身を委ねながら食と会話を楽しむ人々で終日賑わった。街と味と音のミクスチャーが新たな都市文化の形を見せた。



飲食ブースに出店していた『charlie』のスタッフは、「今回初めてフェスに出店しましたが、天神という福岡の中心地で、しかも屋内での開催はとても珍しく、北九州から来た私たちにとっても貴重な経験でした。来場された方々もとても良い雰囲気で、またこうした機会があればぜひ参加したいですね。無添加のやさしい味付けで、癒しの時間を提供できたのでは」と語る。





さらに、『とどろき酒店』も「全体的に落ち着いた雰囲気で、若者だけでなく年齢層の高い方々も多く、ゆったりと楽しめる空間になっていたのが良かったです。出店側としても運営の丁寧さに感謝しています」とコメント。今後の更なる広がりにも期待を寄せた。



その日、会場を訪れていたアパレル関係の仕事に就く30代女性は、「普段からこの辺には来るけど、こんなにチルで癒されるイベントは初めて。たまたま通りかかって立ち寄ったけれど、参加型のイベントが多くてすごく楽しいです」と笑顔を見せた。

「天候を気にせずにフードやドリンクも楽しめて、ふらっと立ち寄れるのが嬉しい」との声も。屋内開催という安心感も、幅広い世代が集まる要因のひとつになっていた。

またイベントブースの横では、アーティストによるライブペインティングも。


5/31には福岡市在住のアーティストToyameg氏が登場

6/1にはWOK22が“交差点”や“交わり”といったテーマを意識し、普段描いている黒の模様と、最近描き始めた植物のモチーフを組み合わせて表現。「このワンビルという空間も初めてで、描きながらとても新鮮な気持ちになれました。ライブで描く緊張感もありつつ、場所の雰囲気と作品がうまくリンクしてくれたら嬉しいですね」と語った。



ジェラートとワインが織りなす花の時間「GELATO NATURALE × Au Bord d’Eau Fukuoka」



自然素材100%のイタリアンジェラート「GELATO NATURALE」と、ボルドーワインの名店「Au Bord d’Eau Fukuoka」によるコラボ出店も人気を集めた。花で彩られた会場では、甘さと酸味のバランスが絶妙なジェラートと、芳醇な香りのワインが訪れる人々を癒やしていた。

箏とヴァイオリンが調和する「アクロス・ミュージックキャラバン」



音楽ユニット「重弦」によるパフォーマンスが、B1F「iiTo TENJIN フードホール」で開催。箏奏者・みやざき都とヴァイオリニスト・工藤真菜による3回のステージでは、和と洋の響きが絶妙に溶け合い、会場はしばしの静寂と感動に包まれた。

食と音楽が混ざり合う、心地よい夕暮れ



ワンビルフェスのトリを飾ったのは、音楽家の江﨑文武氏、BEATBOXERのBATACO氏、Rapper / ContrabassistのNAGAN SERVER氏、そしてDancerのBOXER氏による異色のコラボレーションによるスペシャルセッションライブ。



ピアノやビートボックス、ラップとウッドベース、そして身体表現までもが有機的に絡み合うライブパフォーマンスは、まさに“一度きり”の即興的な化学反応。音の重なりとリズムの高揚に、観客からは自然と歓声と拍手が沸き起こった。



ジャンルも世代も超えて交錯するその空間は、まさに「ミクスチャー=混ざり合い」がテーマである本イベントの象徴ともいえるひとときに。

都市の中の“遊び場”としてのワンビルの可能性


3日間にわたり開催された「ONE FUKUOKA FES」。ダンスワークショップをはじめ、アートや出版、フード、そして街を行き交う人々の存在そのものが、このイベントに命を吹き込んだ。

“創造交差点”というコンセプトのもと、ジャンルや世代を超えて人が自然に交わり、刺激し合う場が、あちこちで生まれていた。それはただのフェスティバルではなく、都市と人が一緒に育っていくための、小さなヒントに満ちた時間だったのかもしれない。

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Interview & Text_ Yumi hyfielde
Edit_ Taku Kobayashi

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