天神を象徴する交差点の大規模店目指すはオンリーワンの店舗
タリーズコーヒーはこれまで鉄道会社とのコラボ実績が多数あるが、廃材を内装に使う店舗デザインは初めての試みだと、タリーズコーヒージャパン事業開発本部・エリアディレクターの松崎真尋さんと、営業本部の花熊秀行さんは言う。
松崎さん:「コラボレーションによるお店作りは通常、できること、やれることを模索しながら演出することが多いのですが、今回はまず完成イメージありきでしたので苦労しました。何と言っても福岡を代表する天神エリア、その象徴でもある天神交差点という立地ですからね。」
花熊さん:「めちゃくちゃ力入っていますよね(笑)。社内でも注目の店舗です。だからこそ、ここでしかできないことをしたい。創造交差点というテーマにふさわしいオンリーワンの店舗を目指しています」
タリーズコーヒージャパンの松崎真尋さん(左)、花熊秀行さん(右)。ワンビル出店への思いを熱く語ってくださいました。
暑い日も、寒い日も…車両基地や工場でひたすら廃材探し
店舗デザインを手掛けるのは福岡在住のデザイナー、松本悠佑さん。
松本さん:「まず、どんな廃材が手に入るのか、形や大きさはどんなものがあるのか、それらがまったく想像がつかなったので、廃材を探しに行くところからスタートしました」
ひとくちに廃材集めといっても、西鉄の電車は鉄道事業本部、バスは自動車事業本部とそれぞれに管轄が分かれており、廃材があると思われる車両基地や整備工場も福岡の各所に点在する。担当の部課や工場などに協力を仰がなくてはならない。
その部品調達の調整を担うのが西鉄の天神開発本部・福ビル街区開発部の浦山達郎さんと岡村俊祐さんだ。
松本さん:「浦山さん、岡村さんと、暑いなか寒いなか、何度もパーツを探しに行きましたね」
浦山さん:「工場のスタッフもみんな忙しいので、『何とか、何とか、お願いします!』と頼み込んでおじゃまさせてもらいました(笑)。幸い、みんな協力的で助かりました」
タリーズコーヒー出店に関するさまざまな調整や廃材調達に携わる西鉄天神開発本部の浦山達郎さん(左)、岡村俊祐さん(右)。
重すぎて使えない!?難航するのは本物だからこそ
最初はたくさん廃材があるだろうから、材料には困らないだろうと思っていた浦山さん、岡村さんだったが、実際に探し始めるとパーツ集めは難航した。
廃車両や使わなくなった部品を求めて車両基地や整備工場へ…。
岡村さん:「廃車になった電車やバスの部品が意外と再利用されていたんですよ。良いことなんですが、私たちとしては当てが外れてしまって…意外と部品ないかも?と焦りました(笑)」
また、デザイン的に「使ったら面白そうだな」という部品も、持ってみると重量があり、内装に使うには適さないものも多かった。
松本さん:「この重さだと壁に取り付けられないとか、万一、落下した時の危険性を考えると使えない、となったり。やはり本物の車両に使われている部品なので頑丈でずっしりしているんですよ。安心安全な車両のために使われた部品なんだということを実感しました」
花熊さん:「部品集めにそんな苦労があったとは(笑)。でも、おかげさまですごく本物志向の内装になりそうですね」
「これは使えそう」「こんなパーツも面白いんじゃない?」廃車両に乗り込み、すみずみまでチェック。
パーツがもつ個性や歴史を感じられるカフェ空間に
苦労もありながら、地道にパーツを収集。つり革や運転席の部品、車内の連結パーツなど、使える部品が集まっていった。
集めた部品はしっかりと洗浄を施すのはもちろんのこと、松本さんが一つひとつ加工を施す。
松本さん:「廃材をそのまま使うのではなく、配線など不要なものを取り除いたり、装飾として使うために加工したりしています。その上で、カフェに来たお客さまにも実際に西鉄の電車やバスで使われていた部品なんだということが分かるような配置をしていきたいですね」
浦山さん:「パーツ集めには苦労しましたが、逆に『こんなものも使えるんだな』という発見や驚きもありました。廃材を地域資源としてアップサイクルする、これも西鉄としての新たな取り組みの一つになったと思います」
福岡に住む人の日常や、観光で訪れる人の移動を支える、西鉄の電車やバス。
たくさんの人やものを運び、まちと人をつないできた車両の部品たちが、タリーズコーヒーという舞台を得て次の物語を刻んでいく。