ワンビルに入居するオフィスワーカー約300人の声から“はじまりのクラフト”を造っていく
10月末、「あおぞらブルワリー」店内はオフィスワーカーで賑わっていた。オリジナルビールの最終調整に向けて試飲会が開かれたのだ。
どんなビールを創ろうとしているのか…?試飲するオフィスワーカーたちをドキドキした表情で見つめていた、プロジェクトメンバーの西鉄・天神開発本部福ビル街区開発部の徳久愛子さんに話を聞いた。
“オフィスワーカーとの共創”との観点から、プロジェクトメンバーは、入居するオフィスワーカーにアンケートという形でビール造りに参加してもらうことにした。集まった回答は300を超えたという。
徳久愛子さん:「反響の大きさに驚いたし、ビール好きは多いんだなと実感してビール造りへの手応えも感じました。“天神”や“創造交差点”から想起する味覚は?という質問には、実にバラエティに飛んだ回答が寄せられました。最先端のイメージから“キレ”があるという声もあれば、歴史があるから“深み”があるという声もありました。真逆の意見も多くて(笑)。しかし、それが“天神”であり、さまざまなものが交わって生まれる“創造交差点”なのでしょうね。」
ワンビルのコンセプト「創造交差点」には、多様なものが混じり合って新しいものが生まれていくという思いが込められている。オフィスワーカーの回答は多様性にあふれ、その交わりから新しいビールが生まれていく過程は、まさにクラフト(創造)。「はじまりのクラフト」というコンセプトにふさわしいビールの誕生に、期待は高まるばかりだ。
オフィスワーカーと一緒に造った“我がビール”を囲んで交流が生まれ、新しい試みが生まれていけば…
ワンビルなどの完成によって、天神で働くオフィスワーカーの数はこれまでの2.4倍といわれている。
徳久さん:「まちの風景を彩るのは人ですから、ワーカーの姿が増えれば天神の風景はガラッと変わるでしょう。私たちはワーカーの皆さんも応援していきたい。ビールを囲んで職場の皆さんとの話が弾んだり、他社の社員さんと仲良くなったり。そういう交流が生まれれば嬉しいですね」
試飲会を見守っていたワンビルの開発事業統括責任者、花村武志さんは「オリジナルビールには皆さんの声が詰まっており、みんなで創った”我がビール”といえます」と語る。「福岡は支店経済と言われていますが、このビール開発に触発されて福岡から新しいプロジェクトが生まれ、支店発のプロジェクトが本社で採用されるといった逆の流れが起これば、なお嬉しい」と、開発の余波にも期待を寄せる。
“キレ”か? “コク”か? “香り”か?「あおぞらブルワリー」醸造家に聞く味の決め手
「あおぞらブルワリー」の醸造家・渡邊雄介さんは、開業記念のオリジナルビール造りを意気に感じているようだ。
渡邊さん:「多くは依頼主の希望にあうビールを造るのですが、今回は一緒に造り上げたいという依頼でしたから、そこにやりがいを感じました。話し合いをするたびに、ワンビルさんからどんどんアイデアが出てきて面白くなり、私もやる気が湧きましたね」
渡邊さんは、最も意見の多かった「キレのある」をキーワードに「飲みやすさ」を追求。原料や酵母、アルコール度数、香りなどを変えながら5つのビールを用意した。
1…苦みが強く、甘い柑橘類の香りが特徴
2…ホップの香りがきき、アルコール度4.5%の軽い味わいが特徴
3…小麦麦芽にペルシャン酵母を使い、コリアンダーのようなスパイシーな香りが特徴
4…アルコール度数8.0%。酵母が作り出す酸味と甘味が特徴
5…ケルシュスタイルが特徴。日本の大手企業の造るケルシュスタイルに近い。
黒板に掲示された試飲会のメニュー
さまざまなタイプをみると、 “天神”と“創造交差点”をいかに味に表現するか、渡邊さんの試行錯誤の様子が目に浮かぶ。これからさらに「はじまりのクラフト」というコンセプトにあうビール1つに絞っていく。
試飲会で「美味しい!」の歓声が上がる中ビール選びに悩むオフィスワーカー
試飲会に招かれたのは、ワンビルに入居予定のオフィスで働く人を中心としたワーカーたち。特徴が書かれた用紙を見ながら一口ずつ、噛みしめるように口に運んでいた。
やがて、あちこちから「これが好き」「私はこれかな」という声が上がった。
「5つとも美味しい!とても1つに選べない!」
「フルーティーな3番は好きだけど、このコンセプトに合うかな?」
「1番はビールらしいビール?」
「4番はワインみたい」
「あー、僕はワイン好きだからか、4番は好きだな」
「私は5番が好きかも」
まさに意見はバラバラ。ある女性は「シチュエーションごとに選びたくなる。頑張るぞというときはこれ、疲れたときはこれ、みたいに」とも。アンケート片手に頭をひねりながら味わう姿はビール造りに参加している姿そのものだった。
試飲会を経て一つの味に整え、仕込みがスタート 新春には待望のオリジナルビール発表
「開業記念に対してプレッシャーを感じる」と話していた渡邊さん。試飲会にはさまざまな年齢層の方が招かれ、ビールの好みや味の評価は分かれたものの、美味しそうに味わう皆さんの表情と活発な意見にやる気も一段と湧いたようだ。
渡邊さん:「試飲会の意見をうまくまとめ、プレッシャーを楽しみながら完成させたいですね。今回造るビールは、ワインのようにテーブルの真ん中にいる存在ではないでしょう。皆さんのコミュニケーションツールとして食事のかたわらにいるような、いい意味で軽い存在になれれば、と思っています。このビールをきっかけにいろんな人とつながり、会話が弾めば造り手として本望です」
さあ、どんなビールができあがるのか。お披露目はまもなくだ。